SKD11製 ガイド部品の高精度製作を可能にする設備力・技術力
搬送装置や組立機でワークを案内・保持するガイド部品。なかでもSKD11製は、焼入れによりHRC58〜62に達する高硬度ゆえに加工が難しく、要求精度は±0.002mmに及ぶこともあります。本コラムでは、SKD11製ガイド部品の高精度製作を可能にする設備力と技術力を、加工事例とともに解説します。
ガイド部品とは|搬送・位置決めを支える部品
ガイド部品とは、ワークを正しい経路や位置へ導き、搬送・位置決め・保持を行うための部品です。搬送装置や組立機のなかで、製品を傷つけずに安定して流したり、決められた位置に正確にセットしたりする役割を担い、コネクタ・半導体・電子部品の製造ラインで数多く使われています。
ワークと直接触れて位置を決める部品であるため、わずかな寸法のずれや形状の乱れが、搬送不良・位置ずれ・ワークの傷に直結します。高い寸法精度と、用途に合わせた特殊形状の両立が求められる部品といえます。
当社が手掛けるガイド部品|本コラムはSKD11製に絞って解説
ひとくちにガイド部品といっても、材質は用途によってさまざまです。当社(精密加工部品特急センター)でも、ステンレス・超硬・スミカスーパー(樹脂)など多様な材質のガイド部品・治具を手掛けています(ステンレス製ガイド部品の製作についてはこちら)。
そのうえで本コラムでは、耐摩耗性が求められる治具・ガイドで採用実績の多いSKD11製のガイド部品に絞り、その加工の難しさと、当社が高精度を実現できる理由を解説します。
ガイド部品にSKD11が選ばれる理由
SKD11は合金工具鋼の代表格で、ガイド部品の材質として次のような利点を備えています。
| 特性 | ガイド部品にとってのメリット |
|---|---|
| 高硬度(HRC58〜62) | 焼入れにより高い硬度が得られ、ワークと繰り返し接触するガイド面の摩耗を抑えられる |
| 耐摩耗性と靭性のバランス | 硬さと粘り強さを両立し、欠けにくく長寿命な部品に仕上がる |
| 寸法安定性 | 精密治具に必要な形状の安定性を確保しやすい |
| コストバランス | 超硬合金と比べて調達しやすく、量産ラインの部品に採用しやすい |
一方で、この硬さこそが加工の難しさにもなります。高精度なSKD11製ガイド部品を製作するには、相応の設備とノウハウが欠かせません。
SKD11製ガイド部品の製作でつまずく4つの課題
課題1:焼入れ材(HRC58〜62)への加工
焼入れ後のSKD11は非常に硬く、通常の切削工具では刃が立ちません。そのため一般的には「切削 → 焼入れ → 研削・放電・磨き」という多くの工程を要し、納期とコストが膨らみやすいという課題があります。
課題2:溝が多い形状は「把持」が難しい
ホルダー機能を持たせるために溝加工を多く施した製品では、溝に対して垂直方向に蛇腹のようにワークが動いてしまうため、加工中にワークがずれる可能性があります。どう固定するかが精度を左右する、難易度の高い加工です。
課題3:3次元・曲面形状の精度
クランプホルダのように内面へ半球面を設ける製品では、Rの精度が製品の気密性に直結します。硬い材料に対して滑らかな3次元曲面を要求どおりに削り出すには、高い設備能力が必要です。
課題4:ミクロン単位の公差と穴ピッチ精度
ガイド部品には、厚み・寸法公差で±0.002mmといった極めて厳しい要求が課されることがあります。また、穴のピッチ精度がそのまま機能を決める製品もあり、加工と仕上げの両面で緻密な管理が求められます。
これらの課題は、「高硬度材を削り切る設備」と「ワークをずらさない段取りの知見」の両方が揃って初めて解決できます。次章から、当社の設備力と技術力をご紹介します。
SKD11製ガイド部品を実現する「設備力」
精密加工部品特急センターを運営する株式会社理工電気は、超精密加工機を中心としたハイエンド設備を社内に揃え、相互補完的に運用することで、高硬度なSKD11製ガイド部品に対応しています。
1. 超精密加工機による焼入れ材の「直彫り3次元加工」
焼入れ済みSKD11(HRC58〜62)に対しては、毎分6万回転の超精密加工機(芝浦機械 UVM-450Dなど)を用いて直接削り出す「直彫り加工」で対応します。放電加工や磨き工程を省略できるため大幅な短納期化とコストダウンにつながり、放電特有の梨地面にならず綺麗に仕上がります。内面の半球面といった3次元曲面加工にも対応可能です。
2. 超精密ワイヤー放電加工機による溝加工
マシニングである程度の形状まで加工したうえで、ホルダー機能に必要となる溝加工をワイヤーカット放電加工で仕上げるなど、工法を組み合わせた複合加工を行います。切削だけでは難しい細い溝や複雑形状も、高精度に作り込めます。
3. プロファイル研削盤・成形研削盤による仕上げ
複数台の研削盤を活用し、複雑な異形状であっても±0.002mmレベルの寸法精度で仕上げます。精度要求の厳しい最終工程を社内で完結できることが、安定した品質につながっています。
4. 高精度画像寸法測定器による品質保証
キーエンス社製の高精度画像寸法測定器(LM-1000)や三次元測定機を導入し、複雑形状や微細な端面も非接触でミクロン単位に測定。全品検査表を添付して納品するため、着荷後すぐに安心してラインへ組み込めます。
高精度を実現する「技術力」|当社のノウハウ
設備を保有しているだけでは、SKD11の要求精度は満たせません。当社が重視するのは、設備を活かす段取りと工程設計のノウハウです。
1. ワークをずらさない「治工具・段取りの工夫」
溝加工が多く動きやすい製品でも、工程選定と治工具を含む段取りに工夫を凝らすことで、加工中のズレを抑えて精度を確保します。とくに精度要求の高い仕上げの研削加工工程では、この段取り力が結果を大きく左右します。他社が敬遠しがちな製品にも対応できるのは、この知見があるからです。
2. マシニング・ワイヤー・研削の工程設計
どの形状をどの工法で受け持たせるかによって、出せる精度と納期は変わります。当社はマシニング加工・ワイヤーカット・研削を最適に組み合わせ、製品ごとに最も確実な工程を設計します。
3. 直彫りによる工程集約と短納期化
焼入れ材を直彫りで仕上げることで、放電や磨きといった仕上げ工程を省略でき、工程集約による納期短縮とコストダウンを実現します。
4. 単品・小ロット(1〜数個)への対応力
当社は電子部品メーカーの工機・生産技術部門との一品一葉の取引で培った、単品から小ロット生産に順応した生産体制を築いています。ロット数個の製作依頼にも柔軟に対応します。
これらの設備力と技術力を掛け合わせることで、当社は難易度の高いSKD11製ガイド部品にも対応しています。実際の製作事例をご紹介します。
SKD11製ガイド部品の製作事例
SKD11製 ガイド部品 加工事例(±0.002mm)
| 製品カテゴリー | ガイド・治具 |
| 材質 | SKD11 |
| サイズ | 30×55×60 |
| 業界 | コネクタ・半導体 |
| 形状 | 特殊形状加工 |
| 加工精度 | ±0.002mm |
ロット5個の製品で、ブロック材から削り出しを行っています。加工プロセスとしては、ある程度の形状までマシニングで加工したうえで、ホルダーの機能を持たせるために必要となる溝加工をワイヤーカット放電加工で行いました。
本製品は厚み・寸法公差について±0.002mmの精度要求があり、溝加工箇所が多い点が特長です。溝に対して垂直方向に蛇腹のようにワークが動くため加工中にワークがずれる可能性があり、把持が難しい製品でした。精度要求の高い仕上げの研削加工工程においても、工程選定・治工具を含む段取りに工夫を凝らすことで、他社が敬遠しがちな製品にも対応が可能です。
電子部品用ガイド -SKD11 直彫り3次元加工-
| 製品カテゴリー | ガイド・治具 |
| 材質 | SKD-11 |
| サイズ | 45×45×20 |
| 業界 | 電子部品 |
| 形状 | 特殊形状加工 |
| 加工精度 | ±0.01mm |
45×45×20とコンパクトなサイズのケーブルクランプホルダです。加工のポイントは、SKD-11(HRC58〜62)に対して直彫りの3次元加工を行っている点です。小型の本体に内面の半球面を作り込む必要があり、限られた面積のなかでRの精度を出す加工となりました。
内面の半球面箇所に対するRの精度要求が厳しく、クランプした製品の気密性が重視されていることが推測されます。焼入れ材を直彫りで仕上げることで、仕上げ工程を省きながら±0.01mmの精度を確保しています。
搬送装置用ガイド・治具 -SKD11切削加工品-
| 製品カテゴリー | ガイド・治具 |
| 材質 | SKD-11 |
| サイズ | 外径Φ130×14 |
| 業界 | 電子部品 |
| 形状 | 特殊形状加工 |
| 加工精度 | ±0.01mm |
搬送装置で使用されるガイド・治具の加工事例です。外径Φ130×14という円盤状の形状で、薄い厚みに対して外径が大きいため、加工中の変形を抑えながら精度を出す必要がありました。ポイントは、SKD-11(HRC58〜62)への直彫り3次元加工です。
内面の半球面箇所に対するRの精度要求が厳しく、クランプした製品の気密性が重視されていることが推測されます。焼入れ材の直彫りにより、±0.01mmの精度で仕上げています。
電子部品 ガイド・治具 -SKD11切削加工品-
| 製品カテゴリー | ガイド・治具 |
| 材質 | SKD-11 |
| サイズ | 153×90×62 |
| 業界 | 電子部品 |
| 形状 | 特殊形状加工 |
| 加工精度 | ±0.01mm |
153×90×62と、ご紹介する事例のなかでは比較的大型のケーブルクランプホルダです。加工範囲が広くなるぶん、全体にわたって精度を均一に保つことが求められました。ポイントは、SKD-11(HRC58〜62)への直彫り3次元加工です。
内面の半球面箇所に対するRの精度要求が厳しく、クランプした製品の気密性が重視されていることが推測されます。大型のブロック材であっても、焼入れ材への直彫りで±0.01mmの精度を確保しました。
ガイド・治具 -SKD11切削加工品-(穴ピッチ精度)
| 製品カテゴリー | ガイド・治具 |
| 材質 | SKD-11 |
| サイズ | 50×15×10 |
| 業界 | 電子部品 |
| 形状 | 特殊形状加工 |
| 加工精度 | ±0.05mm |
電子部品の組立機パーツとして使用される、SKD-11製ガイド・治具の切削加工事例です。加工におけるポイントは、穴のピッチが重要となる点です。細長い形状のなかに配置された穴の間隔がガイドとしての機能を決めるため、ピッチの管理に配慮して加工を行いました。
「焼入れ後のSKD11を高精度に削ってほしい」「溝が多く他社で断られた形状を相談したい」「単品・小ロットで急ぎ調達したい」——そうしたご要望に、専門の設備力と技術力でお応えします。図面はもちろん、現品やサンプルからのご相談も可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。